がん先進治療がん遺伝子治療
遺伝子治療は身体が本来持っている
がん抑制機能を回復する副作用の少ない治療法
遺伝子治療の特徴
がん遺伝子治療は、がん発生の根本的な原因である遺伝子の異常に対してアプローチしていく治療法です。身体が本来持っているがん抑制システムを再び機能させてがんをアポトーシス(自死)に導きます。がんの根本原因にアプローチするので適応の幅が広く、かつ身体が本来持っている機能を回復する治療法なので副作用が少ないのが特徴です。抗がん剤や放射線治療の作用機序にも関連性が高く、併用によりこれらの治療の効果を高めることもできます。
遺伝子治療の背景
1990年に米国で世界初の遺伝子治療が行われ約30年が経とうとしています。この間、遺伝子治療技術は格段に進歩し、世界で遺伝子治療薬の実用化が進んでます。中でも「がん」については世界中で研究が進められ、遺伝子治療臨床試験の65%を占めています。
新型コロナウイルスワクチンの開発においても、遺伝子(DNA)やRNAの体内細胞への導入は、全体の主要部分を占めています。日本でも2019年、遺伝⼦治療⽤製品「コラテジェン」が初めて承認を得ました。現在、遺伝子治療は特別な病気ではなく様々な患者様に提供される技術になろうとしています。
遺伝子治療の歴史
1990年 世界で初めての遺伝子治療実施(米)
1995年 日本で初めての遺伝子治療実施 ADA欠損症
2000年 遺伝子治療の初めての成功例:X連鎖重症複合免疫不全症(仏)
2009年 副腎白質ジストロフィーの遺伝子治療
2011年 血友病Bの遺伝子治療
2012年 EUで初めて遺伝子治療薬の製造販売承認
2011年 血友病Bの遺伝子治療
2012年 EUで初めて遺伝子治療薬の製造販売承認 Glybera:家族性リポ蛋白質リパーゼ欠損症治療薬
出典:https://www.nihs.go.jp/mtgt/section-1/gene-therapy-drug-20160914.pdf
がん発生の仕組みとがん遺伝子治療
細胞は毎日ダメージを受けている
身体を構成する細胞は、化学物質・放射線・紫外線・ホルモンなど絶えず様々な刺激に晒されています。日常生活における喫煙や飲酒、不規則な食習慣なども細胞を傷つける刺激となります。これらの刺激は、細胞の中にある遺伝子を傷つけ、細胞のがん化の要因と言われています。
しかし、日常生活においてすべてを避けることは不可能であり、これらの刺激により細胞が傷ついても問題を細胞自ら解決し処理する能力を持っています。この機能は、細胞内の遺伝子にプログラムされており、個々の細胞に対して毎日適切に働くことで、私たちの身体は「がん」の発生のリスクから守られています。
がん遺伝子治療について
上記のようながんの原因因子により、細胞が破壊されることが細胞のがん化の要因であることがわかっています。毎日絶えず押し寄せるこれらの刺激を受ける度に細胞が、がん化してしまえば私たちは生きていくことができません。
しかし、細胞には細胞が破壊されても、細胞のがん化を防ぐ機能が備わっています。
この機能は、細胞内の遺伝子にプログラムされています。このプログラムが毎日適切に働くことで、私たちの身体の細胞はがん化のリスクから守られています。細胞のがん化を防ぐこのプログラムを「がん抑制遺伝子」と言います。
がん抑制遺伝子の損傷とがん発生のメカニズム
がん抑制遺伝子が機能している限り基本的には細胞はがん化のリスクから守られているはずですが、なぜがんは発生するのでしょう?日常生活で絶えず細胞が晒されている刺激により、がん抑制遺伝子自体が破壊されてしまった場合を考えてみましょう。破壊されたがん抑制遺伝子は本来の働きを喪失し細胞の問題を解決することができません。壊れたまま問題を放置された細胞は制御を失い無限に増殖を続けます。 つまり、がん抑制遺伝子の損傷は、がん細胞が発生する最初の段階であると言えます。
本来のがん抑制遺伝子の機能を回復するがん遺伝子治療
がん抑制遺伝子が損傷した細胞では、がん抑制遺伝子の壊れたプログラムをそのままコピーしながら増殖します。細胞の問題を自ら解決する能力を喪失しているので、壊れた細胞が壊れたままに引き継がれ増殖します。その過程で免疫に対する抵抗性を身に着けたり無限増殖の機能を備えたりする中で、およそ10年程度の期間を経てがんとして発見されます。約1cmのがんは約10億個までがん細胞が増殖した状態です。
がん遺伝子治療は、身体が本来備えているがん抑制遺伝子を点滴などにより再びがん細胞へ導入する治療です。がん抑制遺伝子の投与により、がん細胞は本来のがん抑制機能を回復し、がん細胞の増殖を停止し、アポトーシス(細胞の自死)に導きます。がん遺伝子治療は、もともと体内に備わっている遺伝子を投与するので、治療による副作用がほとんどありません。通常の生活をしながら通院での治療が可能です。
もちろん、抗がん剤治療や放射線治療と一緒に行うこともできます。がん遺伝子治療は多くの症例で抗がん剤治療や放射線治療の効果を高めるという結果も多数報告されています。 がん遺伝子治療はこれまで標準治療では適応ができなかった末期がん治療や、標準治療と組み合わせによる標準治療の効果を高めるコンビネーション治療、また治療後の再発の予防のための治療として、その効果が期待されています。
がん遺伝子治療は、
一人ひとりの「がん」に合わせた テーラーメイド型の治療へ…
がん遺伝子治療の特徴の一つとして適応の幅が広いことがあげられます。しかし、がんは非常に多様で一人ひとりその顔つきは異なります。当院では、複数の遺伝子を用意して患者様の「がん」に合わせてこれらを組み合わせることで幅広い「がん」に対して適応していくことを目指しています。がんの種類や進行状況、他の治療併用の状況、患者様のご希望を尊重しつつ最適な治療プランを提案していきます。遺伝子治療は、原発のみならず全身に転移した転移巣にも効果があります。
当院で使用する遺伝子
併用することで抗がん剤治療や放射線治療の効果を高める
末期がんの患者様において遺伝子治療が特に有効な治療と考えられるポイントは、遺伝子治療を事前に行うことで抗がん剤治療や放射線治療の治療効果を増幅する効果が期待できる点です。
抗がん剤治療にしても放射線治療にしても、がん細胞に対して重篤な障害を人為的に与えることで細胞に問題を発生させ、その危険信号に気づいたがん抑制遺伝子を強制的に働かせてがん細胞をアポトーシスに導こうとする治療です。抗がん剤治療や放射線の効果が人により著しく異なるのは、細胞に問題を発生させてもそれに気づくべきがん抑制遺伝子がそのがん患者さんのがん細胞の中に正しく備わっていない場合があるからです。がん発生の原因は、がん抑制遺伝子の損傷にあることから抗がん剤治療や放射線治療を行っても、その仕組みが機能しにくいのもがん細胞の特徴と言えます。
がん遺伝子治療では、がん抑制遺伝子を正しい状態に置き換えてから抗がん剤や放射線治療を行うことで、この作用機序をしっかり機能させ、その本来の効果を発揮できるよう手助けします。
当院で末期がん(ステージⅣ)の患者様に抗がん剤治療や放射線治療を併用した場合の治療実績が以下の通りです。がんの種類別や治療内容ごとにこれを明らかにするには至ってはおりませんが、抗がん剤や放射線の治療前もしくは治療間にがん遺伝子治療を行ったケースにおいて、著しい効果を得られた症例が多くなっています。
また、これまで標準治療のみで効果が十分に得ることができなかった末期がんの患者様でも、がん遺伝子治療との組み合わせにより、これまで得られなかった治療効果が得られるようになったりする症例が少なくありません。また、身体状況により標準治療の適用にならなかったケースにおいても、遺伝子治療を併用することで、抗がん剤の投与量や放射線の照射量を軽減し、これらの治療の適応の幅を広げていく可能性も期待されます。
元々健康な細胞に備わっている「がん抑制遺伝子」が、抗がん剤・放射線の危険信号に気づき、がん細胞をアポトーシスに導きます。
「がん抑制遺伝子」などの変異による、がんに対する自己解決能力の喪失は、がんの発生の根本原因の一つです。複数の遺伝子の変異の変異を伴いがんは成長をしていくことから、がん細胞ではこれらの遺伝子が複数壊れており、複合的にその機能を喪失しています。
がん細胞において、本来細胞に備わっているはずの「がん抑制遺伝子」が機能していない場合、抗がん剤や放射線などの危険信号に気づくことができず、がん細胞がアポトーシスできません。しかし、遺伝子治療を行うことで、新しく点滴などで投与された正しい遺伝子の耐性ができてしまい効果がなくなってしまった抗がん剤や放射線などでの治療も可能になります。
がん遺伝子治療の適応について
1、「標準治療」などにおいて他に治療の選択肢がない場合
2、年齢・副作用などにより「標準治療」の継続が困難であった場合
3、「標準治療」を現在(もしくは今後)実施中(または予定)であり、併用を患者本人が望んだ場合
4、1~3以外の場合で、「標準治療」を含む他の治療の選択肢について「十分な」説明を受けた上で治療を患者本人望んだ場合
※ 1~4のいずれかに適合し、かつ通院が継続的に可能であると医師が判断した場合
適応の可能な「がん」の一例
大腸がん 膵臓がん 食道がん 胃がん 肝がん 腎がん 胆道がん 肺がん 膀胱がん 前立腺がん 甲状腺がん メラノーマ 肺がん 乳がん 子宮体がん 子宮頸がん 卵巣がん 口腔がん 咽頭がんなど
適応の不可能な「がん」の一例
1、脳腫瘍全般
2、小児がん
3、悪性リンパ腫・白血病、多発性骨髄腫 など
副作用について
当院では重篤な副作用は見受けられません。ごくまれに、軽度な副作用として、発熱やだるさを感じることがあります。
この症状は特別な処置をしなくても12-24時間程度で改善されます。
【国内外の報告から、遺伝子治療の副作用として考えられるもの】
・感冒様症状
・消化器症状(下痢、吐き気など)
・アレルギー性反応(発疹など)
・軽度の白血球減少
・腎機能障害
・骨髄抑制(高度の貧血、高度の白血球減少など)
・血液凝固障害(出血傾向、血栓症など)
がん治療の流れ
患者様の症状により、変更がある場合もあります。
お電話によるカウンセリング
まずはお気軽にお電話ください。
電話番号 0120-232-255※電話相談無料
セカンドオピニオン外来
治療について医師よりご説明いたします。また、患者様の病状をお聞かせください。お一人おひとりに合った治療プランのご提案をさせていただきます。※診療情報提供書は、必須ではありませんが、直近の検査データなどありましたらご持参ください。
治療開始
患者様がご提案の治療をご希望された場合、治療プランに基づき治療を開始いたします。治療前にあらためて検査の必要がない場合は、セカンドオピニオンでご来院された当日から治療を開始することも可能です。
評価
治療開始後は、適宜画像検査や血液検査などから治療の評価をしていきます。※上記検査以外に、オプションとして遺伝子検査などをお受けいただくことも可能です。
未承認医薬品等で あることの明示、 入手経路等の明示 |
本治療に用いる遺伝子は、医薬品医療機器等法上の承認を得ていないものです。院内調剤(一部外部委託)として、適法に調剤しています。 日本では、未承認医薬品を、医師の責任において使用することができます。 *承認を受けていない医薬品・医療機器について「個人輸入において注意すべき医薬品等について」 のページをご確認ください。 |
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国内の承認医薬品等の 有無の明示 |
がん遺伝子治療に使用できる同一の性能を有する他の国内承認医薬品はありません。 |
諸外国における 安全性等に係る 情報の明示 |
・Germline-integrationのリスク評価 ・General Principles to Address the Risk of Inadvertent Germline Integration of Gene Therapy Vectors Oct. 2006 |